ビオトープによる水辺の風景の再生

ビオトープっていまいち何なのかわからないんだよな?という子供たちにビオトープを解説。

ビオトープの解説

生徒A:「ビオトープっていまいち何なのかわからないんだよな」

先生:「それでは事典を引いてみようか」と言って「生物学事典」(岩波書店)を生徒Bにわたす。

生徒B:「えーと、ビオトープとは特定の生物群集が生存できるような、特定の環境条件を備えた均質なある限られた地域と定義されています」

生徒A:「やっぱり難しいなー」

先生:「簡単に言うとドイツ語のBiotopそのままの「生息場所」なんだよ。」
生徒A:「なーんだ。そんな簡単でいいんだ。」

先生:「だけどね、ただ単に生息場所といっても、単にその生物が見られた場所というのではないんだよ。すべての生物はその種を維持していくために、採餌、睡眠、繁殖、成長(種によっては渡りや移動)などを行うための場所が必要なんだね。また、これらがとどこおりなく行われるためには、他の生物群との交渉も不可欠なんだよ。生物のこのような「生活」を世代をこえて保証するものがビオトープなんだ。」

生徒A:「僕たちの家や学校みたいなものだね、家で食べて寝て、学校では勉強したり遊んだり」

先生:「そうだね。ただしおまえの場合は学校でも寝てるけどな」

生徒A:「へへ…」

先生:「まあ、それはさておいて学校や家などの小さなものから、人間社会という大きなものまで様々な形で人間にとっての「生活(生息)場所」というのはあるようだね。また、なくてはならないものだしね。近年、このビオトープに強い関心がよせられ、日本各地で親水公園やトンボ池、ホタル川の復元や保護が行われているんだ。今回は特に河川に関連ある事例を紹介していくよ。」

近自然工法

近自然工法とは、単に生物学的な手法や生物材料を用いた工法というのではなく、植物を植えていったり、群落の形成を促すことによって、その水域に生きている植物の社会を創出し、それが持っているさまざまな機能を積極的に活用する工法です。

次の図はその一例で、ドイツのホルツバッハ川の再改修のようすです。改修前のまっすぐな流路を蛇行させることにより瀬や淵がつくられ、深みや浅瀬等の変化ができ、植生を復元することにより生物の生態環境に多様性をもたらすことができました。

多自然型川づくり

多自然型川づくりとは、平成3年から建設省より実施されたもので「河川が本来有している生物の良好な生育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出する事業の実施をいう」と定義されており、河川改修計画作成の際に、次のような事項に特に留意するように指示されています。

過度のショートカットを避け、現在の川が持っている多様性に富んだ環境の保全につとめる。
川の横断面を上下流一律になることを避け、できるところでは川幅を広くとって、河道の貯留能力を高めると共に、その用地を「多自然型川づくり」に活用する。
水理特性や背後地の状況に応じて、生物の良好な生育環境と自然景観の保全・創出に配慮した護岸工法を選択する。

この多自然型川づくりの一例として札幌市の精進川の再改修を紹介したいと思います。

精進川はすでに改修が終わり、両岸とも頑強なコンクリートブロックの護岸でたたまれたものになっていましたが、再改修されるにあたって多自然型工法が用いられました。再改修された区間は川岸のコンクリートブロックが撤去され、緩やかな傾斜の土手になり、流路には敷内で可能な蛇行が復活されています。
また、撤去したコンクリートブロックは歩道の側壁や川のいたるところにあるヤナギの根元を守る護岸として再利用されています。

ここで紹介したものは河川整備事業のほんの一例にすぎず、全国各地で生態系や環境を復元させようとする事業が行われています。これらビオトープの保全はトンボやホタルのためばかりではなくわれわれ人間にとっても非常に意味のあることです。コンクリートブロックで固められ異臭を放つ川よりも、生命にあふれる古き良き日本の風景を後世に残したいものです。

参考文献

桜井善雄:「水辺の環境学」新日本出版社(1991)
桜井善雄:「続・水辺の環境学」新日本出版社(1994)